君が、いた
土砂降りの雨が 君の声をかき消していた
数歩先で立ち止まった僕は ふと後ろを振り返った
喧騒や騒音の中 君は確かに存在していた
古い木造アパートの片隅で 体を小さく丸めて
うっすら開いた君の瞳が
先を急ごうとする僕を その場に釘づけにした
傘を持ち直した僕は そっと君に近づいた
無言で君の体に触れると 微かに震えたのがわかった
トクン、トクン―――…
冷え切った君の体から 温かな吐息が零れていた
そっと抱き上げると 君はギュッと力を込めた
君の体温が安定した頃
時を告げる鐘の音が 僕を現実に引き戻した
もう行かなきゃ―――…
手にしていた黄色い傘を そっと差し出すと
君は虚ろな瞳を空に浮かせ 恨めしそうに僕を見た
そんな仕草が可愛くて たまらなく愛しくて…
初めからわかっていたんだ
君を放っておくなんて 僕には到底できっこない
「一緒に、来る―――?」
再び尋ねると 弱々しくも優しく穏やかに
君は口を開いた
「にゃぁ〜……」
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